イベントレポート:森七菜×今村圭佑×奥山由之
12月21日(土)16:00の回@テアトル新宿&19:45の回@109シネマズ二子玉川
森さんが出演する「第3編」の脚本を担当したのは、劇作家で演出家の根本宗子さん。家出をした姉(今田美桜)と、そんな姉を探しにやってきた妹(森)が互いに感情をむき出しにしながら、激しい言い合いをするさまを描き出したエピソードだが、膨大なセリフ量と、ハイテンションで激しい動きが展開されるドラマということで、森さん自身「何よりもセリフを覚えるのが大変でした」。また根本さんならではのセリフ表現についても、「たとえば同じ言葉でも、ちょっと言い回しが違ったりして。“男”とか“男の人”っていう感じの“言い回し問題”があったんです。だからお風呂の中でずっと格闘してました」と振り返る。
そして、その芝居をカメラマンとして間近で見ていた今村さんが「ちゃんと台本と同じことを言っているのかも分からないようなテンションだったから。本当に言っているのか、アドリブが入っているのかも分からなかった」と振り返ると、奥山監督も「完成した作品を、脚本を読みながら見返してみたんですが、ほぼそのままだった。あれだけ感情的かつ身体的にも激しい動きのあるような、うっかりすると制御が効かなくなる長回しを、丁寧に演じきることは本当にすごいこと」と感服した様子だった。
そんなふたりの言葉に「(今田)美桜ちゃんが言葉の発端をつくってくれたんで。わたしはそれについていくだけ。ある意味コバンザメみたいな感じでした」と笑う森さん。実際に完成した本編を観て「全部通して観た時に、わたしたちが普通だと思って叫んだりしながらやっていたんですが、実は全体の中であんなに嵐(のエピソード)だったとは。他のチームと比べても異質な感じがして。それはすごくうれしかったです」と振り返った。
本作の基本的な撮影は、15分のシーンを通して撮影し、それを数回繰り返し、編集でそれらの映像を組み合わせるというスタイル。そんな撮影を「普段の撮影とは違いますね。15分間、同じシチュエーションで、しかも会話だけで演じるというのはなかなかない経験でした」と振り返った森さん。
そんなセリフを覚えるプロセスを言語化するべく、「まずは絵として覚えて。最初の段取りのときは、頭の中で覚えている状態なんです。それで段取りで動きを確認しているうちに、こういうことなんだなと。やっと身体に染みついてくる感じ」と森さんが説明すると、今村さんも「そう、俺もセリフは絵で覚えてる」と続けてドッと沸いた会場内。「だから初日とかはセリフを覚えられなくて。相手がどう返してくるのかも分からないんで」という森さん。すかさず今村さんが「相手がいることなので。相手がどう返すのか、その間が分からないからね」と補足説明すると、まさに我が意を得たり、という感じで「そうなんですよ!」と共鳴し合っている様子の森さんと今村さんだった。
森さんとの撮影を振り返り、「現場では小さなモニターで確認していたので、細かいところは気付かなかったんですが、編集時にじっくりと見返すと、例えば姉(今田美桜)の言葉を聞いている時の表情がものすごく胸を打つ表情をされていて。現場では気付かなかった目の微細な動きなども本当に引き込まれるものがあった。あらためて素晴らしいお芝居をしていただいた」と語る奥山監督。「森さんのお芝居って常に流動性というか、不確実性に満ちている感触が、人物に実在感と説得力を持たせていて。それがスクリーンから目を離せない理由のひとつだと思う」と分析。「そういうのを感じます」と続けた今村さんも「撮影って、台本があるので。いちおう僕たち、つくる側の想像があるわけじゃないですか。でも彼女は基本的にどっかに行っちゃうので。自分たちが想像してないことをしてくるんだけど、俺らみたいなのはそういうのが好きなんですよ。だから流動性を感じられるんですよね」とその意見に深く同意する。
さらに今村さんは「今回は(役柄としては)どちらかというと受ける方じゃないですか。ちょっと前なら逆だった。発散する側の役が多かったと思うんで、大人になったなと思いました。謎の親戚のおじさんのような気持ちでいます」としみじみ付け加え、会場を沸かせた。
会場は109シネマズ二子玉川へ
そして会場を移動して、109シネマズ二子玉川へ。こちらではお客さまからの質疑応答を中心に、トークが行われた。上映前でのトークイベントということで「これから観る人に見どころを」という質問。まず今村さんが「それぞれのエピソードで脚本家が違って、お芝居も違うんで、言葉のテンションやつくり方がまったく違う。僕はカメラマンなんですが、この映画は言葉の映画だと思っているので、セリフをかみ締めながら観てもらえたら。そして俳優の皆さんの魅力を感じながら撮っていたので、そこも感じてもらえたら」と語ると、森さんも「ひとつひとつの言葉とか、あるあるみたいなものが、毎回“分かる!”と思うことが多くて。皆さんもそういう楽しみ方をしてもらったら」とコメント。最後に奥山監督が、「全てのエピソードを同じ場所で撮った物語ですが、それぞれの物語ごとに撮影手法や演出のアプローチを変えているので、その変化を楽しんでいただけたら」と呼びかけた。