イベントレポート:岸井ゆきの×岡山天音×荒川良々×奥山由之
12月15日(日)15:30の回@テアトル新宿&17:40の回@109シネマズ二子玉川
映画上映後に行われたこの日のトークショーも満員御礼。映画鑑賞後の興奮冷めやらぬ満席のお客さまの前に、奥山由之監督と、岸井ゆきのさん、岡山天音さん、荒川良々さんら「第2編」のキャスト陣が登壇すると、会場は一気に華やかな雰囲気に包まれた。
この日は、1日しかなかったという撮影日を振り返りながら、制作の舞台裏について語り合った4人。実際に完成した作品を鑑賞した岡山さんは「この作品に関しては、ざっくりとほかにどんなメンバーが出演するのか、というのは聞いていました。でも自分が出ているところ以外の話は知らなかったですし、映画を観たらすごいことになっていて。“エクストリーム”だなと。こんなところまで連れてかれるのか」と驚きを隠せなかった様子。
「第2編」の脚本を担当したのは、ダウ90000を主宰する蓮見翔さん。脚本を実際に読んでみて「面白いと思いましたけど、この台本を覚えるのか、とも思いました」と振り返った岸井さん。ちょうどその頃に、セリフの多い役柄をやっていたということもあり、セリフを覚えるのに苦労したというが、岡山さん、荒川さんとの芝居は非常に楽しかったという。また、撮影の直前に本読みを繰り返し、その流れで撮影に向かうことができたということで、「あれは良かったです。あれでだいぶ(セリフが)定着できました」と振り返った。
本作は16ミリフィルムで撮影。現在はデジタルカメラでの撮影が主流になっているが、それゆえに荒川さん自身、この撮影が非常に印象的だったようで、「監督のこだわりでフィルムで撮ってるんです。途中、バイク便で(追加の)フィルムを持ってきてもらったこともありました。そんなことばかり覚えてます」と明かすと、奥山監督もその時の記憶が鮮明によみがえってきたようで、「そんなこともありましたね」としみじみ語る。
その後は会場からの質問を受け付けることに。「お三方はどの作品を観ても非常に自然な演技ですが、どうやっているんですか?」という質問が寄せられると、「どうやっているんですかね……」と顔を見合わせた3人。まずは岸井さんが「同じカットを切り返して(カメラの角度を変えて)撮影をした時も、まったく同じ感じではできなかった。その場の空気でというか……」と振り返ると、岡山さんも続けて「本当に即興性があるというか。作為を持ってやっているわけではなかったということですよね」とうなずいてみせる。
劇中では岸井さん演じる菜々が、岡山演じる貫太に対するいくつかの不満をぶつけるシーンがあった。そのことを踏まえて別のお客さまからは「実際に岸井さんがやられたら気になるなと思う事は?」という質問が。そこでまずは「どんなことがありましたっけ……?」といいながら“菜々が劇中で吐露した不満”を整理し始めた4人。
「バイク乗りじゃないのに、バイク乗りみたいな格好をしている」「芸能人を呼び捨てにする」「ちょっとだけ飲ませてもらおうとしたジュースに口をつけないで飲む」……などなど劇中で出てきたエピソードを振り返った登壇者たちだったが、しばしの熟考の後、岸井さんが出した答えは「でもバイク乗りみたいな格好はやだな……けっこう気になる」というもので、その答えに会場は大笑い。
そして衣装合わせの時の私服が、まさに劇中の衣装に近かったという岡山さんに向かって、岸井さんが「いっそのことバイクに乗れば?」とぶちまけると、「それじゃ劇中のやり取りと一緒じゃない」と笑いながら返した岡山さん。気心知れた4人のやり取りに、この日のトークは終始大盛り上がりとなった。
続いて岸井さん、岡山さん、奥山監督の3名が109シネマズ二子玉川でトーク
イベントレポート:岸井ゆきの×岡山天音×奥山由之
テアトル新宿のトークショーに引き続き、岸井さん、岡山さん、奥山監督の3名が109シネマズ二子玉川に移動してトークショーを実施。こちらでは、お客さまの感想・質問を受け付ける場となった。
会場のお客さまからは「ひとりひとりのセリフが自然で飽きずに見ることができた」「別れ話をするシーンで、岡山さんが『別れたくない!』というセリフがかわいかった」「Vimeoで公開された時は小さい画面だったので、こうして大きい画面で観られてよかった」といった感想が次々と寄せられた。
3人の芝居がとにかく自然だったという感想を踏まえて「どこまでが台本で、どこまでがアドリブ?」といった質問も。それには岡山さんも「アドリブを入れられるような隙がある台本じゃなくて、細かいところまで準備されている。蓮見さんの台本が本当にすばらしかった」と語る。
その流れで、岸井さん、岡山さんのキャスティングについて明かした奥山監督。菜々が貫太に抱く不満の内容は、誰もが共感できるものでありながら、その不満を寿司ネタに例えてみせる、という蓮見さんならではの飛躍がある脚本を、リアリティーをもって演じることができるのは誰か。という考えからお願いしたいと思ったのが岸井さんと岡山さんだった。そしてそんなふたりに全幅の信頼を寄せている様子の奥山監督。さらにそのカップルの会話にさりげなく入り込んでくるおじさんが、果ては貫太の寿司まで食べてしまうという非日常性。俳優・荒川良々が持つ、どこか浮世離れした「唯一無二の存在感」がこの国枝の役にピッタリだった。
その後も、本作の撮影前に行われた入念な本読みや、実際の撮影場所を確認したことなどについて話し合った4人。岸井さんは「基本的には前もって俳優がロケーションに行くというのはあまりないですよね」と前置きしつつも、「でもわたしは以前の作品でロケハンに行ったことがあります。河川敷と、アパートに行きました。どこでどう暮らしているのかとか。チームで歩くところからやったので。それはなんて豊かなことなんだろうと思いました」と振り返ると、奥山監督も「この作品でもいきなり現場に行って撮影、ではなくて。キャストの方々に事前に場所を見てもらえたのは、僕としてはとてもうれしかったですね」としみじみ語った。