旅すること 走ること 料理すること Vol.02

Text by 大桑 仁

走ること①

20代の頃は寝る間を惜しんで猛烈に働いていたから、生活が当然のように不規則だった。
夜中の2時に、お腹一杯焼肉を食べて寝るような毎日。
当然のように体重は増加の一途をたどり、28歳の時には83kgになっていた。
そもそも長距離走は昔から苦手で、学生時代を通じても15km以上走り切ったことがない。
中学の狭山湖の16km走も最後は歩いていた。
高校の時にボーイスカウトで夜間50kmハイクにでたことはあるけれど、集団での歩行だし。
一応大学まで体育会ではあったのだが。
 
30代に入って、スプーンに入り結婚して生活が少しだけ健康的になった。
40歳になって娘が生まれた時、もうちょっと健康のために何かしないとなぁと思った。
時間を見つけて週末に走ったり、海外ロケで時間ができた時に走るようになった。
でも、たまに走る距離は5kmくらい。
そのころ体重は73kgくらいまで落ちていた。
妻から、あなたの身長をかんがえたら、適正体重は68kgくらいじゃない?と言われた。
いやいや、プロデューサーはある程度貫録もなくちゃいけないから、
68kgなんて、痩せすぎだよ、学生時代と同じくらいじゃないか。
そんなに痩せたら絶対に仕事がこなくなるから、このくらいで良いのだよ、と答えていた。
そもそも自分は長距離走にはむいていない体型だ。
それに、真剣にマラソンとかに向き合っている人をみると、なんだかなぁ、と思っていた。
 
私が40代半ばの時に、ナベさんが50歳になった記念にと、東京マラソンを走った。
え、42.195kmをあのナベさんが!かなりの衝撃だった。
テレビ中継を見ながら、ネットでナベさんのラップを追った。
5時間くらいでゴールした時に、我慢できずに感動したとメールした。
フルマラソン、もし走れたらカッコ良いだろうなぁと思った。
 
そのもう少し後に、Iさんが「BORN TO RUN」という本を薦めてくれた。
この本を読んで、ランニングに目覚めた人がたくさんいるらしい。
きっと、大桑さん、この本好きですよ、私は読んでいないけれど、と。
本は最高に面白かった。
 
なんとなく、健康に毎日を過ごしていたけれど、
更に何かした方が良いのではないかと心のどこかで思っていたのは
私の家系に早逝者が多いからもあるかと思う。
父は52、生みの母は30代、姉2人ももういない。
育ての母(生みの母の妹)も。
 
私の年齢が父の年齢に近づいていく。
娘の成長はちゃんと見届けなくちゃいけない。
 
そんな色々なことが後押しして、
50歳になるまえに、何か新しいことをしようと決めた。
 
で、フルマラソンに挑むことにした。
(続く)