FILM DIARY September 2022

Text by 二井 梓緒

暇さえあれば映画が見たいスプーン三年生による、
映画評論ブログ#7です。

夏になるとホラーが見たくなる!
昨年は『闇動画』シリーズや『呪いのビデオ』をひたすら見ていましたが、
今夏は邦画・洋画関係なく、まだ見たことがなかったホラーをせっせと見ました。
そこで今回はこの夏見た私的おすすめホラー映画を紹介します。
残暑のお供に、よろしければお読みくださいませ。



やっぱり怖い!海外ホラー編
『アンフレンデッド:ダークウェブ』(2018)
若い男の⼦がずっと欲しかったmacをたまたま拾ってしまう。
その持ち主は闇取引の王者で、ハッキングをされてひたすらに脅迫される。
すべてがデスクトップ上で完結していて、 なんとも今時な作品。


やっぱり怖い!ジャパニーズホラー編
『ある優しき殺⼈者の記録』(2014)
⾃称POVを⼀番撮っている!という⽩⽯晃士監督の作品。
舞台は韓国。⼤量殺⼈の容疑のある男が幼なじみに連絡し、⾃分をインタビューしてくれとお願いする。そこで男は⽀離滅裂な発⾔をしまくり、⼈を殺そうとする。
全てPOVで全部⻑回し(途中何箇所かは切られているとは思うが)という狂気の映画。『アンフレンデッド』 もPC主観の映画なので近いものを感じるが、POVになると⼀気に怖さが増す気がする。⽩⽯監督は先⽇公開された『オカルトの森へようこそ』も⼤変⾯⽩そう。

『地獄の警備員』(1992)
巨匠 ⿊沢清作品。POV になるととりあえず怖いと思ってしまいがちだが、やっぱりそうじゃなくても⿊沢清の作品は全部怖い。
これはビルの警備員が次々に⼈を殺してしまう作品だが、陰鬱とした空間(ライティング)と忍び寄る恐怖の感覚(⾳響)がとにかくすごい。 ライティングと⾳響でこんなにも怖さは演出できるのかと思うと、楽しい映画でもその⼆つをガラッと変えたらホラー映画になるのかな、など考えてしまう。


番外編
これは果たしてホラーなのか…と思った作品たち。

『フォーガットン』(2004)
ジュリアン・ムーアは『マグノリア』然り、神経質な役が本当に似合う!と思っているのだが、本作もそうで、神経質なお⺟さんであるジュリアン・ムーアがまだ⼩学⽣ほどの息⼦を亡くして病んでいる…
けれど周りはみんな⼦どもなんてそもそもいなくて、流産したんだよと説得している最中、もう⼀⼈同じような娘を亡くしたおじさんに出会う。たまたま記憶⼒が良すぎた⼆⼈は謎を解明しようとするが、保安官などに追われたり、終いにはよくわか らないモンスターが空から現れて、⼦どもがいたという真実を暴こうとする⼈を吸い込んでいく。
この謎のモンスターが吸い込むのが笑っちゃうくらい安っぽくてなんだか元気がでる作品。

『代官⼭HORROR』(1987)
80年代後半、まだ代官⼭がお洒落じゃなかった頃の作品。
アイドル育成学校に通う⼥の⼦3⼈が、アイドルデビューのために最後のミッションとして夜の代官⼭を練り歩くお話。
満⽉の⽇の夜の代官⼭には危ない⼈がたくさん現れるという…。
途中でV系の⼈たちが演奏をしていたりして、⼥の⼦たちが怯えて⾛って逃げるシ ーンなど、なんだかこれはこれでV系に失礼じゃないか?という軽やかすぎる作品。

『フライパン殺⼈』(1982)
レストランを経営するのが夢なラブラブな夫婦がある⽇、帰宅した奥さんのことを強姦しようと部屋に⼊り込んだ男を旦那が焦ってフライパンで殴り殺す。
そうしたところその男の財布のカードには⼤量のお⾦が…
味をしめた⼆⼈は奥さんをネタに様々な男を誘惑してフライパンで叩いて殺害し続ける。フライパン以外の殺害⽅法はなく、最初はフライパンで 2、3回叩くのだが、最終的に1回だけで殺せるようになってしまう。そんな旦那さんのスキルに笑うし、最後の最後はもはや殺害のカットは映されずに⾳だけで殺害したのだと分っちゃう。ホラーなのか…?



こうして⾊々⾒てみるとやはり海外と⽇本のホラーでは
前者は突然びっくり型で、後者はじわじわ怖い型に分かれており、これは国⺠性というか昔から伝わる怖いお話でもそうなのかな〜と思いました。
あとはやっぱり⾳響の偉⼤さです。⿊沢清作品はなんでこんなに怖いんだろう?と思ったとき、⾳が全部怖いからだ!と思いました。
夏はホラーがすっきり楽しい季節です。来年はなにを⾒るか今からたのしみです。



⼤学院ではアッバス・キアロスタミの研究をしていました。たまに批評誌サイトに寄稿したりしています。 ⾒た映画のなかから考えたことなどをこれから少しずつ書いていこうと思います。

⼆井