momo memo 9
満腹度MAXな映画
時は 16 世紀末バロック時代。
プロテスタントの勢いを⽌めようと
カトリック教徒たちはプロパガンダとして⾳楽・美術に⼒を⼊れ
プロテスタントの質素なイメージとは対照的に
豪華で感情豊かな表現を磨いていった。
そんなゴージャスな絵のスタイルを
ドロドロな⼤⼈の人間関係を描くために使ったのが
ピーター・グリーナウェイ監督の『コックと泥棒、その妻と愛⼈』(ʼ89)。
買い取った高級フレンチレストランで
毎晩優雅に食事をしては下っ端に自分の自慢をしまくるゴロツキと、
食事を抜けてレストランで知り合った愛人と浮気をしまくるその妻。
それぞれのキャラクターの欲望は見事にバロック時代の貪欲さとマッチしている。
更に、この映画はヨーロッパ中で流行ったバロックスタイルの中でも
ドラマチックなライティングと繊細なディテールで有名なフラマンスタイルを意識している。
映画の舞台となるレストランの中でも
駐車場・厨房・エントランス・ホール、
それぞれライティングと色味づかいを変えており、
常に各登場人物の感情と合わせても照明と色味を調整している。
ごちゃごちゃと物で溢れる背景は登場人物の欲張りな感情を更に高める。
息苦しいくらいに情報が詰まってる絵に加え、台詞もストーリーもとにかく濃い。
まるで高級フレンチのフルコースを無理やり食べさせられてる感覚になっていくが、
それもそれで映画の目的を果たしているし、それこそがこの映画の魅力なのかもしれない。
とにかくいろんな意味で満腹になる映画なので、
ちょっとお腹が空いてるぐらいの時に観ることをお勧めします。
【ABOUT momo memo】
好きな映画のワンシーンを好きなように描きながら
映像のことについて考える、気まぐれなお絵かきメモです。
2021/03/04