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FILM DIARY August 2021

暇さえあれば映画が見たいスプーン二年生による、
映画評論ブログ#3です。
よろしければお付き合いください。

 

 

『Moxie(2021)』Netflix

 

相変わらず家で映画を⾒ることが多いが、配信サイトNetflix はオリジナルも優れた作品が多いと感じる。 例えば今年の春に配信スタートされたばかりの『モキシー』もとても面白かった。
本作はアメリカの高校を舞台にした物語である。主⼈公の女の子は学校になんとなく蔓延るカーストだったり、男尊女卑的ムードに違和感を持っていた。
そんなときに彼女は母親の部屋からgrrrls zine (ガールズ・ジン)を⾒つけ出す。


「ガールズ・ジン」というのは90年代に活躍したバンド、Riot Girlsなどが作った日本でいうミニコミだったり同人誌である。その多くは手書きで簡単にプリントされたもので、(お金はないけど、自分の意見を 届けたかったり、少しでも多くの人に読まれることを目的としているため)当時多くの若い女性バンドなどが発信していたものである。主人公の女の子はそんなパンクな!ジンに触発され、自身もそれを作り学校中にばらまく。そしてそれを手に取って自身の置かれている立場に疑問を持ったクラスメイトたちとともに、学内の違和感と対峙していく物語である。
この作品は「フェミニズム」というおかたい怖そうな女たちの運動といういまだに蔓延している負のイメージを⼀撃する力があると思った。公開当時、一部の人々から様々な反響を呼んだ本作は、批判の中に「過激すぎる / やりすぎだ」「実際のフェミニズムと意識が違う〜」などという意見もあったが、逆にここまでわかりやすい方が、2021年になっても、なおこうした空気はある(そしてそれは高校でも)という現状を理解しやすいという面もあるのではないかと思ったのである。
CMも語弊はあるかもしれないが、見返してみるとその時の時代背景だったり、流行りや社会情勢がくっきりと映し出されているとよく思う。商品自体でもその時の流行はわかるが、それに紐づいてどういったストーリーを見せるかだったりで、少し過激でも、その時代の状況を訴えようとする人たちがいるからこのような映像が生まれたのかと思うと見方もだんだんと変わってくる。

 

ちなみに監督はエイミー・ポーラーという元々は女優として活躍していたが、いつの間にか脚本も手掛け、ついに本作では、監督を努めた(自分も出演しつつ!)という多才な女性である。
例えば、監督であるエイミー・ポーラーにおいても、こうしたいろんなことができるフレキシブルさというのはCM制作にはつきものなのではないかと思う。
ただ限定された仕事を淡々と行うのではなく、その時々によって自分で考えさまざまなことに取り組むのは、とても面白いことだと思う(例えばあるCMをつくることになってその題材についてのリサーチなどで今まで自分が全く興味を持たなかったことを知ることだったり、自分のフィールド以外の人と話せる機 会などがあるのはこの仕事の特権だ)。世界には知らないことがたくさんあって、時には別に知らなくても生きてはいけることもあるが、そんな気にもしなかったことを知ることによって視野は広がるし、それは映画においても、このような仕事でも同じことが⾔えるのではないかと思った。

 

 

大学院ではアッバス・キアロスタミの研究をしていました。たまに批評誌サイトに寄稿したりしています。見た映画のなかから考えたことなどをこれから少しずつ書いていこうと思います。

 

Text By

二井 梓緒
二井 梓緒

Shiwo Futai

プロデューサー/プロダクションマネージャー

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